レイセオン・ミサイルズ&ディフェンス、米海軍へSPY-6レーダーを提供する契約を6億5,100万ドルで受注

米海軍は、レイセオン・テクノロジーズの一事業部門であるレイセオン・ミサイルズ&ディフェンス(RMD)との65,100万ドルの契約により、小型哨戒艇から巨大空母まで、米海軍艦隊が今後新造するすべての水上艦艇に敵のミサイルや航空機を同時に探知・追尾できる新レーダーを搭載することになります。この契約には追加調達のオプションが含まれており、行使された場合の累計額は316000万ドルになります。

今回の受注により、レイセオン・ミサイルズ&ディフェンスは、SPY-6レーダーシリーズのハードウェア製造及び整備維持を提供することになります。

レイセオン・ミサイルズ&ディフェンスの社長であるウェス・クレイマーは次のように述べています。「SPY-6に海上能力で比類するレーダーは存在せず、その構造と今後の製造が米海軍にとっていかに重要であるかは、本契約から明らかです。既存の海軍向けレーダーの中でSPY-6は最も先進的であり、米海軍に向こう数十年にわたり飛躍的な能力向上をもたらします」

このレーダーにより、乗組員は極超音速兵器を含む脅威をより遠くから発見し、より迅速に対処することができるようになります。

レイセオン・ミサイルズ&ディフェンスの海軍能力担当社長であるキム・アーンゼンは次のように述べています。「米海軍が現在艦艇に搭載しているものと比べて、大幅に性能が向上します。ペンライトを巨大な懐中電灯に取り換えるようなものです」

2021年、米海軍は新しいフライトIII駆逐艦であるUSSジャック H. ルーカス(DDG 125)において、最初のSPY-6の搭載を開始しました。

同艦に搭載されたSPY-6レーダーは、それぞれ4面のアレイと、電力システム、冷却システム、そしてアレイからの信号を処理するバックエンド・プロセッサ1基から成ります。

将来に向けた拡張性

SPY-6は米海軍初の真に拡張可能なレーダーであり、艦艇の種類に応じて容易に構成を変更できます。

SPY-6は、レーダーモジュラーアセンブリ(RMA)と呼ばれる個別の「ビルディングブロック」で構成されます。RMAはそれぞれが単体で作動するレーダーアンテナで、幅、奥行き、高さ各2フィートの「箱」に収められています。積み重ねが可能で、艦艇の任務所要に応じてほぼあらゆるサイズに合わせて配列できます。

レイセオン・ミサイルズ&ディフェンスの海軍向けレーダー シニア・ディレクターであるスコット・スペンスは次のように述べています。「フリゲート艦や様々な艦種に合わせて拡張できます。また、あらゆるプラットフォームにわたり、極めてスムーズに、迅速に機能を追加することも可能です」

契約期間満了までに、海軍全体で45隻を超える艦艇にSPY-6が搭載される予定です。

スペンスは次のように続けます。「本契約により、SPY-6は海軍の要として運用されます。先進的能力を高めるだけでなく、全艦艇を支えるロジスティクスを共通化し、レーダーを運用・維持する乗組員らに共通の訓練を施すことで、保守管理も向上させるのです」

レーダーのソフトウェアのベースラインが共通のため、更新は容易で、新たなハードウェアを導入する必要はありません。統合・生産支援に関する別の契約により、RMDはSPY-6レーダーシリーズの稼働終了までソフトウェアの更新を行います。

高効率生産に対応

レイセオン・ミサイルズ&ディフェンスはこれまで、SPY-6向けのインフラと能力の増強に5億ドルを超える投資を行ってきました。30,000平方フィートのレーダー開発施設における先進的な自動化技術は、その一例です。この事業では、「Immersive Design Center(仮想空間でありながらあたかも物理空間に入り込んだ印象を与えるイマーシブ〔没入型〕設計センター)」を活用して工場を組み立て、より速く、より良いものを納入するためにプロセスを改善しました

スペンスは「当社は高効率生産に対応するため、SPY-6の組立てと検査を完全に合理化しました」と語っています。

このような効率化は、レイセオン社が統合するレーダーシステムの75%を提供するサプライヤー間でも共有されています。

「このレーダーシリーズを成功させるために、私たちの部品等供給拠点や国全体で多くの作業が行われているのです」と、スペンスは話します。

イノベーションを継続

レイセオン・ミサイルズ&ディフェンスは、生産要求に応えつつ、海軍と協力してレーダーの改良を続けています。

2021年、レイセオンと米国海軍研究局は、SPY-6レーダー向けの新たな分散型センシング用ソフトウェアの試験を実施しました。この実証実験は、進化する脅威を防御するための分散型センシングネットワークを構築するという米海軍の目標をサポートするものです。

これに先立ち、RMDと米海軍は、バージニア州ワロップス島にある水上戦闘システムセンターでのエンタープライズ対空捜索レーダー(EASR)の試験を完了しました。

回転型SPY-6(V)2 と固定型SPY-6(V)3は、どちらもEASRの派生型として知られています。試験では、両レーダーの対空戦能力と航空管制能力、気象条件が整わない場合の運用、電力系統に重点が置かれました。

EASRは、従来の単機能のレーダーに取って代わり、探知距離と性能を向上させていきます。