防衛企業の連携によって深まる日米同盟

レイセオン・ミサイルズ&ディフェンスは、日本が主権を守り安全保障を確保する一助となるソリューションを60年以上構築してきた。同社日本代表のジョナサン・クリス・ゴフ氏にその概要をきいた。

深まる日米同盟を背景に

日本の菅義偉元総理大臣は、2021年4月の訪米でジョセフ・バイデン大統領と面会し、バイデン政権発足後に初めて直接会談した外国首脳となった。席上、バイデン大統領は「米国政府が党派の枠組みを超え、お互いの安全保障への揺るぎない支持を確認した」と述べアイゼンハワー政権時代から変わらない外交政策を行うことを約束した。

菅総理もホワイトハウスでの共同記者会見において「米国は日本の最良の友人である」と語り「日米は、自由、民主主義、人権などの普遍的価値を共有する同盟国。日米同盟は、インド太平洋地域、そして、世界の平和、安定と繁栄の礎として、その役割を果たしてきました」と発言。その上で「一層厳しさを増す地域の安全保障環境を踏まえ、日米同盟の抑止力、対処力を強化していく必要がある」と確固たる日米同盟関係の重要性を強調した。

二人の首脳が揃って重要性を語るこの絆が結ばれてから60年以上、レイセオン・テクノロジーズとその前身であるユナイテッド・テクノロジーズは、この同盟を持続・深化させてきた。同社傘下のレイセオン・ミサイルズ&ディフェンスとレイセオン・インテリジェンス&スペースの2つの事業部門は、長年日本の自衛隊及び防衛産業と連携し日本の安全保障上のニーズに応え、革新的なソリューションを開発、貢献してきた。

「エアボーン21」に参加する陸上自衛隊の空挺団(2021年3月実施)。この過去最大の日米共同降下訓練には、陸自空挺団の隊員約600名と米空軍C-130輸送機12機が集結。130個の物量投下も実施した(photo:米空軍)

「エアボーン21」に参加する陸上自衛隊の空挺団(2021年3月実施)。この過去最大の日米共同降下訓練には、陸自空挺団の隊員約600名と米空軍C-130輸送機12機が集結。130個の物量投下も実施した(photo :米空軍)

長年のパートナーシップ

レイセオン・ミサイルズ&ディフェンスの日本代表ジョナサン・クリス・ゴフ氏は「私達の実績と専門知識を、日本の安全保障という重要な任務に提供できることは光栄です」と語る。元米海兵隊大佐であり、日本でも数年間の勤務経験を持つゴフ氏は「当社のチームは、その能力や防衛産業との連携を活かし、日本のすべての領域で包括的に国民と主権を守り続けられるよう、その要望やニーズに応えてきました。そして、他社から抜きん出ている点は、長きにわたる日本企業と築いた団結力の強さです。私は日本に長く勤務していますが、当社ほど深く日本の産業界と連携している防衛関連企業を知りません」と説明する。

「日本企業には、世界に通用する能力をもったエンジニアや科学者がいます。さらに高水準の品質管理・製造能力を持っています。日本企業と私達が力を合わせれば、防衛ソリューションを今以上に強化し、推し進めていくことができます」とゴフ氏。また、日本企業との協業で目指すことは、ビジネスの機会を創出だけではなく、日本で行う取り組みや構想と世界で展開する関連プログラムの双方への貢献である、と補足した。

レイセオン・ミサイルズ&ディフェンスと日本の防衛産業との提携が、絶えず重要視されるようになったのは1960年代以降のこと。三菱電機が地対空ミサイル「ホーク」のライセンス生産を始めたのがきっかけだった。現在、同社は日本の艦艇を巡航ミサイルから守るESSMブロック1ミサイルをレイセオン・ミサイルズ&ディフェンスと共同生産している。また、三菱重工業は長年にわたり、日本を守るペトリオット防空ミサイル防衛システムを製造してきた。さらに、他の提携事業でもSM-3ブロック IIAの共同開発及び製造を手掛けている。

三菱重工業とレイセオン・ミサイルズ&ディフェンスが共同開発した、SM-3ブロックIIAミサイル。大陸間弾道ミサイル迎撃試験に初めて成功(2020年11月)(photo:米国ミサイル防衛局)

三菱重工業とレイセオン・ミサイルズ&ディフェンスが共同開発した、SM-3ブロックIIAミサイル。大陸間弾道ミサイル迎撃試験に初めて成功(2020年11月)(photo:米国ミサイル防衛局)

こうした日本の防衛産業とのパートナー関係や生み出される製品は、次々に出現する脅威に対処するため、レイセオン・ミサイルズ&ディフェンスが日本を支え続けてきた事例のほんの一部に過ぎない。上記の企業以外に富士通、IHI、東芝などがパートナー企業となっている。「これらすべての企業、自衛隊、そして日本の国民が安心できるよう、レイセオン・ミサイルズ&ディフェンスは、日本の安全保障上のニーズを優先事項として応え続けていきます。当社の率先した取り組みによって、日本の能力やシステムは常に維持、アップグレード、保証がなされています。そのことで、海や陸、さらには宇宙から迫りくる脅威を探知、追尾し、防御することが可能になっています」とゴフ氏。

将来の展望

将来を見据えた上で、日本の防衛省が関心を示しているテーマは、極超音速兵器やグレーゾーンなど、進化する敵対的脅威への対処を目的とする新たな近代化された能力。その中で、レイセオン・ミサイルズ&ディフェンスが活用を広げているのが、人工知能(AI)やモデリング・シミュレーションといったデジタルトランスフォーメーション(DX)技術だ。DX技術を活用して開発・アップグレードしたソリューションは、日本のニーズに合わせた仕様となっており、すでに保有する装備品との統合、米国といった同盟国との相互運用性の確保が可能にしている。同時に、自衛隊を継続して支援するため、StormBreaker誘導爆弾や艦艇用のSPY-6レーダーシリーズなど、新しい装備も提供している。

一方、レイセオン・テクノロジーズの製品には、状況把握に関する製品など、災害派遣要請を受けた自衛隊をサポートする目的の装備品も知られている。「災害救援は、自衛隊の任務のひとつです。その統率力が遺憾なく発揮される場面ですが、ここでも当社のソリューションは実績をあげています」とゴフ氏は語る。敵対的脅威対応から災害派遣まで幅広い任務をこなす自衛隊へのレイセオン・テクノロジーズの貢献は将来も大きなものがあるだろう。

2019年9月、日本の八重山諸島での離島防災訓練に参加する自衛隊員。陸海空自衛隊の統合運用による円滑な人道支援・災害救援は、定期的な訓練の成果といえる(photo:米海軍)

2019年9月、日本の八重山諸島での離島防災訓練に参加する自衛隊員。陸海空自衛隊の統合運用による円滑な人道支援・災害救援は、定期的な訓練の成果といえる(photo :米海軍)

出典・雑誌「航空情報」2021 年10月号(せきれい社刊)